2007年12月14日金曜日

対日攻勢強めるHSBC

来年から日本で個人向け金融業務に参入する英金融大手のHSBCは12日、店舗戦略やサービスの概要を発表した。最大で50支店を展開し、富裕層向けに投資信託やローン、個人年金など幅広い金融商品を提供する。米金融大手のシティグループも日興コーディアルグループを買収するなど、外資系金融機関の対日戦略が加速している。

 HSBCによると、グループ中核企業の香港上海銀行が、1月31日から営業開始する広尾支店(東京)を皮切りに、今後5~10年で30~50支店を展開。関東と関西の2大都市圏に居住し、金融資産1000万円以上を保有する「マス富裕層」向け営業に特化する。

 定期預金や外貨預金など通常の銀行商品に加えて、50種類以上の投資信託や生損保商品、住宅ローン、クレジットカードなどを提供する。年中無休の現金自動預払機(ATM)やインターネットバンキングなど顧客の利便性も追求。ATMでは、ゆうちょ銀行、セブン銀行と提携し、香港上海銀行の顧客は2行のATMを無料で利用できるようにする。

 それぞれの顧客にリレーションシップマネジャーと呼ばれる専任担当者がつき、資産運用や各種の相談に応じるきめ細かいサービスも自慢で、香港上海銀行のフランソワ・モロー個人金融サービス本部長は会見で、「マス富裕層は、日本の銀行サービスに不満を抱いている」と語った。

 シティも日興コーデを来年1月にも完全子会社化する方針で、すでに日興コーデ系の投資信託を扱うなど、日興コーデの商品や顧客基盤をフル活用する構え。今年11月には東証1部に上場し、日本の投資家や顧客へのブランドの浸透を急ぐ。

 外資系金融機関が日本戦略を強化するのは、従来の日本の金融機関のサービスに飽き足りない顧客の獲得が狙いだ。

 だが一方では、米国のサブプライム(高金利型)住宅ローン問題で欧米の金融業界が揺れるなか、海外戦略で収益源とリスクの分散をはかる思惑もありそうだ。HSBC、シティはそれぞれサブプライム関連の巨額損失を計上しており、サブプライム問題の行方が、両行の今後の日本戦略を左右する可能性もある。