2007年11月28日水曜日

オイルマネーに“一喜一憂”

原油価格の高騰で膨張する中東のオイルマネーが27日の東京市場を大きく乱高下させた。午前中は米サブプライム(高金利型)住宅ローン問題の深刻化懸念から株安・円高・金利低下が進んだが、午後に入り、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁がサブプライム関連の巨額損失を出した米金融大手のシティグループに75億ドル(約8100億円)を出資するとの発表が伝わると、株高・円安・金利上昇へと一転した。

 前日の東京株式市場では、世界最大の外貨準備を持つ中国政府が日本株投資を本格化させるとの思惑で株価が急騰した。サブプライムショックで神経質な展開が続く金融市場は、存在感を増す巨額のニューマネーに“一喜一憂”している。

 東京株式市場の日経平均株価は午前中に前日終値比333円34銭安の1万4801円87銭まで急落。しかし、午後には一時177円34銭高の1万5312円55銭へと急騰。終値は87円64銭高の1万5222円85銭と小幅続伸だったが、安値と高値では、510円も動く乱高下を演じた。

 東京外国為替市場でも午前中に一時1ドル=107円台前半まで円高・ドル安が進んだ後、108円台まで下落。債券市場では、長期金利の指標となる新発10年債の利回り一時1・420%まで急低下。その後、1・5%台前半に急反発した。

 午後に入り、動きが一転したのは、オイルマネーが世界市場に流入し、サブプライムショックによる信用収縮が緩和されるとの安心感が広がったためだ。特に、株式市場では、26日にUAEのドバイ政府系投資会社がソニーに「大規模投資を行った」と発表しており、「欧米の外国人投資家に代わり、オイルマネーが割安な日本株投資を活発化し、買い手不在が解消される」(市場関係者)との期待感が広がっている。

 実際、オイルマネーの投資意欲は高まるばかりだ。8月にドバイ政府系の投資会社が「ユニクロ」との争奪戦の末、米高級百貨店のバーニーズ・ニューヨークを買収したほか、9月にはアブダビ政府系の投資会社が日本のコスモ石油の筆頭株主となった。

 みずほ総合研究所によると、中東産油国が投資に使えるオイルマネー(累積経常黒字額)は8840億ドル(95兆4720億円)に上るという。

 ただ、市場を翻弄(ほんろう)しているのもまたオイルマネーだ。サブプライムショックをきっかけにオイルマネーも株式市場から原油市場に逃げ込み、1バレル=100ドル目前に迫る高騰の一因となった。原油市場への流入額は日本円で10兆円に上るとの推計もあり、オイルマネーが原油をつり上げ、さらに膨張する“自作自演”を繰り広げている。